塩野七生さんの『ローマ人の物語』

今回も、私が大好きなこの小説のレビューをお届けしましょう!

長き雌伏の時を経たカエサルが「陽の当たる道」を漸く歩みはじめた頃、ポンペイウスは既に地中海全域を覇権下に収めていた。カエサルもスペイン統治を成功させ、危機感を強めた「元老院派」は両者の排除を図ろうとする。しかしクラッススを加えた三者は「三頭政治」の密約を交わし、カエサルは41歳で執政官に就任。ついに国家大改造に着手し、さらなる野望実現のため、ガリアへと旅立つ。

ローマ史の転換点となり、「ローマが生んだ唯一の創造的天才」とも評されるユリウス・カエサル。

一級の政治家であり、戦えば必ず勝つと言われ、さらには、ラテン語散文の最高峰とも言われる多才。

『ローマ人の物語』のなかで、この「ユリウス・カエサル」というサブタイトルがついたシリーズは、そんな天才が何を考え、何を語り、何を行ったかを追いかけることになります。

印象に残ったエピソードは数多くありますが、2つに絞って、ご紹介したいと思います。

場を演出することで人を動かす

ポンペイウスに対しては、カエサルはより効果的な方法で臨んだ。賛成と決まっているポンペイウスに賛成演説を求めたのでなく、この「三頭政治」の一頭に対しては、「ユリウス農地法」の一項目ずつをカエサルが読みあげ、その項目ごとにポンペイウスに、賛成か否かを問いかける方式をとったのである。演説が得意でないポンペイウスは、この方式を、カエサルの自分への思いやりと取ったのだったが。カエサルが一項目を読みあげ、それに対しての賛否を問われたポンペイウスが賛成を答えるたびに、群衆からは大拍手と大歓声が巻き起こった。全項目が終わっても、カエサルはポンペイウスを離さなかった。カエサルはポンペイウスに向い、法案というものは成立しただけでは充分でなく、その後の実施段階でも誰かが責任をもって監視する必要があるので、それをポンペイウスに引き受けてもらいたい、と言った。そして、それにポンペイウスが答えるのを待たず、市民たちに向って言った。「この大いなる責務を、偉大なるポンペイウスが引き受けてくれるよう、願おうではないか、諸君!」

市民「ワァー、ワァー!」
野心家であるよりも虚栄家であるポンペイウスは、大歓声を一心に浴びて気分が高揚し、不得手も忘れて演説をはじめた。(p52)

カエサルのエピソードには、人心掌握の天才だと唸らざるをえないものが数多くありますが、これもその一つです。

演説の苦手なポンペイウスの弱点を補って、ゼロにするだけではなく、さらに効果的に活かすという離れ業。

こんなふうに盛り上がった民衆の拍手喝采を浴びるというような「場」を設定されてしまっては、ポンペイウスならずとも、張り切ってしまうでしょう。

カエサルの交渉や、演説のエピソードを読んでいると、相手を満足させながら、カエサル自身の狙いも達成するという演出が目立ちます。

結果として、相手は満足しながら、喜んでカエサルに協力してしまうのです。私たちは、それを「Win-Win」と呼んだりしますが、カエサルはそれを天性でやってしまう人だったのかもしれません。

報告書に部下の功績を明記したカエサル

元老院への報告書でも『ガリア戦記』でも、部下のあげた功績ははっきりとそのことを銘記したカエサルである。(p174)

部下のあげた功績をはっきりと報告する。

こんな上司であれば、部下たちも張り切って成果を競ったことでしょう。

上述した演説のエピソードでも、他のエピソードを見ても、カエサルは、人の心の動きというものを知り尽くしていたんだろうなぁ、と思わせる部分が多くあります。

カエサルを読んでいると、リーダーからフォロワーへの一方通行の指揮命令ではなく、フォロワーから信頼されるリーダー像というものを考えざるをえません。

長く長く尊敬され続けるカエサルの生き方を一つの参考にして、自分のあり方を振り返ってみたいものだと思います。

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