『仕事は楽しいかね?』

私の大好きな一冊です。物語の形式で書いてあるので、とても読みやすい。けれど、その内容は深い。

まだまだ自分の血肉にできている感じはしませんし、読み返すたびに新しい発見がある本ですが、一度、書評を書いてみたいと思います。

 

発明家マックスとの出会い

主人公は、さえないサラリーマン。

出張を終えて、ようやく帰宅の途についたものの、空港から帰りの飛行機に乗ろうとした彼を待っていたのは、欠航のお知らせだった。

季節はずれの雪。

「まったくついてない」と嘆く主人公のもとに、たまたま現れる発明家マックス。

空港が止まっている一泊二日で、彼の短いレッスンが始まります。

 

発明家マックスの「まぐれ当たり学」

マックスの教えは、私たちが「成功への道筋」と思っているものを、ことごとくひっくり返します。

いわゆる「成功への道筋」というのは、例えば、こんなイメージです。

成功者は、夢が明確にあって、それを逆算して、10年後、5年後、1年後に目指すものを明確にしている。いったん目標を立てたなら、燃えるような情熱でどんな困難にも負けず邁進し、それを達成させる。

でも、マックスはまったく違うことを主人公に教えます。

『試してみることに失敗はない』(p29)

 

「僕がいままでに掲げた目標が一つだけある。聞きたいかね?」ぜひ、と私は答える。”明日は今日と違う自分になる”だよ。(p39)

 

「事業も仕事も、世の中のほかのすべてのことと同じだ。つまり、偶然の連続だってこと。多くの人が”計画どおりの結果になるものはない”という使い古された決まり文句にうなずくのに、相変わらず大勢の人が計画を立てることを崇め奉っている。計画立案者はもっと少なくてよくて、まぐれ当たり専門家こそもっとたくさん必要なのにね」(p61)

 

目標や夢がないからという理由で失敗した事業を、僕は知らない。おもしろいことに、夢や目標こそが成功の秘訣だということは数え切れないくらい耳にするけど、いざその夢なり目標なりを実行に移して市場に入り込むと、十人中九人が失敗する。ろくでもない秘訣だね、そんな目標や夢なんて。ほかのみんなもそうだけど、目標に関するきみの問題は、世の中は、きみの目標が達成されるまで、ジーっと待っていたりしないということだよ。(p72)

 

「つまり結論は、『何もするな、そうすれば素晴らしいアイデアがやってくるだろう』じゃない。『〈あらゆること〉をしろ。素晴らしいアイデアは、どこからやってくるかわからないのだから』ですね」(p123)

 

彼の教えは、「計画を立てて、逆算して…」というような、よく本に出てくるアプローチとは正反対です。

でも、私には、この「常識とは反対のアプローチ」がとてもしっくりきました。それまで、計画を立てることも、逆算することも上手くできなかったからです。

「計画を立ててみよう」と言われて、やってみても、どうしても「とらぬ狸の皮算用」感がぬぐえませんでした。自分自身が納得した計画になっていないんだから、当然、実行もできませんでした。

計画を立てて、しっくりこず、また別の機会に計画して、納得できず…そんなループを延々と繰り返していたときに、この本に出会ったんです。

 

「計画」から「実験」へ

初めて読んだときには、衝撃を受けました。

今まで、「計画がなければいけない」と思い込んでいました。私の世界は、計画を中心に回っていたんです。

それを、「いや、計画なんて関係ない。偶然が大きいんだから、いろんなことを実験して、上手くいくものを探せばいいのさ」というアプローチを教えられたのです。

中心にしているものが、「計画」から「偶然」に変わる。そう、それは例えれば、今まで太陽が地球のまわりをまわっていると、地球が中心だと信じていたのに、本当は太陽が中心なんだよ、と教えられたような衝撃でした。天動説から、地動説になったかのような。

でも、衝撃を受けると同時に、うずうずもしていました。早くやってみたい、というワクワク感です。

計画を中心にしたアプローチをやっているときには、私はかなり眉間にシワが寄っていたと思います。全然楽しくないんです。

「これをやったほうがいい」と頭で考えたものを、リストにして、逆算して、数値に落としていくので、「ワクワク」とか「楽しみ」とかが入ってくる余地が少なかった。

でも、「いろいろ実験して、上手くいくものを探していく」というアプローチは、単純に楽しいんです。

そして、眉間にシワを寄せて難しく考えていた頃には、何をするのにも「これは長期的に見て、意味があるだろうか」なんて考えすぎて、フットワークがとても重かったと思います。でも、気軽に考えて「とりあえずやってみよう! 試してみることに失敗はない」と思えるようになったら、途端に気楽になり、前に進めるようになりました。

この本は、私の中心を計画から偶然に変えてくれたという意味で、コペルニクス的転回を経験させてくれた本でした。大げさな言い方かもしれませんが、計画を中心にがんばっているんだけれども、いまいち楽しくない、充実してない感じがするという方には、ぜひオススメしたい一冊です。