今回は、私が大好きな塩野七生さんの小説『ローマ人の物語』の書評、文庫第7巻をお送りしましょう!

前一世紀初頭、ローマは内外で混迷の度を深めていた。同盟者戦役に続き、小アジアではミトリダテス戦役が勃発、ローマも内乱状態に陥る。戦役に勝利した名将スッラは反対派を一掃。前81年、任期無期限の独裁官に就任し、ローマの秩序再建のため、国政改革を断行する。しかし「スッラ体制」は彼の死後間もなく崩壊。この後登場するポンペイウスは、ローマの覇権拡大を果たしたが…。

地中海世界の覇者になったローマ。

覇者になったがゆえに、国土が大きく広がったがゆえに起きた、統治体制の制度疲労。

改革者と既得権者の戦い。それが、覇者ローマに起きた「勝者の混迷」でした。

国内の争いであるがゆえに、政治的であり、考えさせられる一言が多かったです。その中から、特に印象に残ったフレーズを2つご紹介しましょう。

 

負けない戦いをするには

正規軍は勝たなければ負けだが、ゲリラは負けなければ勝ちなのである。(p95)

戦い方を考えさせられる一言でした。

普通、私たちは、「勝つためにはどうすればいいか」を考えます。テストで例えれば、「どうやって平均よりも上を取るか」ということを目指します。

でも、発想を逆転させて、「負けないためにはどうすればいいか」という戦い方もありそうです。

これをテストで例えれば、「平均点そこそこで構わないから、少ない労力で押さえるにはどうすればいいか」という戦い方です。

五教科七科目で、すべて平均以上を取ることは至難の業なので、「苦手な科目はどうやって平均点くらいまで持っていくか」を考える。あるいは、本当に苦手なら「どうやって致命傷を避けるか」を考えてもいいかもしれません。

苦手な科目で平均くらいを取ることができれば、あとは得意科目で勝ってしまえば、トータルでは「勝ち」です。

これは、生活にも応用できそうです。自分の苦手なものが出てきたときに、「どうやって上手くやるか」ではなくて、「最低限、落第しないために押さえるところはどこか」を考えて、そこだけに集中する。

そうした「負けないための戦い方」というのも考えてみたいと思います。

 

戦わずして勝つ法

いかに戦略戦術の天才が率いようと、戦力の小さい軍隊には欠点もある。戦闘が優先するあまりに、外交面がおろそかにならざるをえないという点である。つまり、闘わずして勝つ、という課題に割く余力があまりないということだ。無言の圧力をかけるのは、何といっても「量」であったからだった。(p172)

「戦わずして勝つ」これが最高の勝ち方であると、世界最古とも言われる兵法書『孫子』にあります。

しかし、戦わずして勝つためには、外交に持ち込まなければいけない。外交に持ち込むためには、その後ろに、「実力」が控えていなければいけないわけです。

これは、戦いに限りません。

「戦略戦術の天才が率いる」を「仕事などのクオリティの高さ」と読み替えて、「圧力をかけるのは量」ということを「相手からの見え方が大事」と読み替えていくと、面白いと思います。

自分の仕事の質にこだわることも当然、大事だけれども、それと同時に「相手からどう見えるか」「相手にどう見せるか」という「見せ方」の部分で、戦う前に勝負がついてしまうことがあるかもしれない、ということです。

もちろんウソをつくのはタブーですが、質にこだわるだけではなく、「見せ方」も研究する必要があるなと感じたワンフレーズ。 「相手にどう見せるか」考えてみたいテーマです。