終身独裁官に就任し、共和制だったローマから、帝政ローマへの道すじを示したものの、志半ばで暗殺されてしまうユリウス・カエサル。

そうしていきなり歴史の表舞台に踊り出た、後継者オクタヴィアヌス。

カエサルが暗殺された当時18歳でしかなかった彼は、しかし、カエサルが指名した後継者。凡人ではまったくなかった。

ここから始まるのは、カエサルの後継者指名以外、何も持っていなかった18歳の少年が、初代ローマ皇帝となり、ローマ帝国というシステムを作り上げていくプロセス。

初代ローマ皇帝となり、アウグストゥスと名乗ることになる彼の、長い長い戦いが、いま始まった。

前44年3月15日、ローマ都心のポンペイウス回廊で、ブルータスら十四人の元老院議員にカエサルは暗殺される。地中海全域を掌握し、迅速に数々の改革を断行、強大な権力を手中にして、事実上、帝政を現実のものとした直後のことだった。カエサル暗殺の陰で何が起こっていたのか。カエサル亡き後の帝国を誰が継承するのか。そして、カエサルの遺した壮大なる世界国家の構想は、果して受け継がれていくのだろうか。

『ローマ人の物語』のブックレビュー。今回も、印象に残ったフレーズをご紹介する形で進めていきましょう!

印象に残ったフレーズ

人事の妙は組み合わせの妙

カエサル自身は、平時と戦時の両方に対処できる才能の持主だった。アントニウスには、戦時の才能しかない。オクタヴィアヌスには平時の統治の才能はあると見抜いたカエサルだが、戦場での才能はないことも見抜いていた。しかし、平和も防衛努力なしには成り立ちえないと考えるカエサルは、軍事面の才能を欠いたままのオクタヴィアヌスでは、後継者には不適であると考える。それで、オクタヴィアヌスに欠けている面をおぎなうために、生まれは卑しくとも誠実で軍事的才能に恵まれた、アグリッパという名の若い兵士を選び、オクタヴィアヌスに付けたのである。(p53)

「人事の妙は組み合わせの妙」という言葉があります。

一人ですべてをカバーする、天才のような人間を探すのではなくて、一人でできないなら複数の人で強みを組み合わせカバーする。

カエサルは、平時の統治能力はバツグンのオクタヴィアヌスに、戦場での才能のあるアグリッパをつけることで、オクタヴィアヌスの弱点を補おうとします。

そうして、この人事は、カエサルの炯眼を証明することになりました。

オクタヴィアヌスは初代ローマ皇帝となり、ローマ帝国の基盤をつくり、アグリッパは生涯にわたりオクタヴィアヌスを助けます。

敗者のゲーム

アントニウスとオクタヴィアヌスの間にくり広げられた抗争は、政治上の考えの対立から生まれたものではない。権力を誰が手中にするかをめぐって争われた、権力闘争である。しかし、それでは、民衆の同意まで獲得するのはむずかしい。(中略)三十代に入ったばかりのカエサルの後継者は、実に巧妙なやり方で、個人間の闘いを国家間の闘いにすり換えることに成功したのである。敵はアントニウスではなく、このローマ人の将軍を傭兵隊長にしてしまったエジプトの女王クレオパトラであると、人々に信じこませたことであった。(p198)

カエサルの後継者として指名されたこと以外に、何も持っていなかったオクタヴィアヌス。

使えるものが何もないときに彼が採った戦い方は、さながら「敗者のゲーム」を思い起こさせます。

「敗者のゲーム」というのは、書名にもなっていますが「ミスしたほうが負ける」というゲーム。

政敵であるアントニウスの失点を、一つずつ利用して、自分のポイントを稼いでいくオクタヴィアヌス。

その中でも、最も面白いのが、上記のエピソード。

アントニウスが、エジプトの女王クレオパトラと結婚してしまったのを巧妙に利用します。

もともとはカエサルの後継者争いという、オクタヴィアヌス対アントニウスの個人の戦いでしかなかったものを、ローマ対エジプトにすり替えてしまった。

エジプトの女王クレオパトラが、誇り高きローマの武将アントニウスをたぶらかしてしまった、というストーリーを作り上げることで。

アントニウスの失点を利用しながら、得点を稼ぎ、アウグストゥスは着実に自分の地位を固めていきます。世論を味方につけながら。

カエサルが設計図を描いていたとはいえ、帝政ローマを実際に作り上げることになるアウグストゥスの冴えわたる政治感覚に痺れます。

アウグストゥスの活躍は、また次回から数巻にわたってご紹介していきましょう!

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