学習性無力感(学習性無気力)。

「何をしてもムダだ」と感じたら、その無力感が学習されて、自発的な行動を起こさなくなってしまう。

その概念と出会ったのは私が大学生のとき、心理学の講義でしたが、あまりに衝撃的だったので記憶にこびりついています。

今回は、学習性無力感とはそもそも何なのか、どんな症状なのかの事例、克服のヒントをまとめてみたいと思います。

学習性無力感とは

学習性無力感とは、その名前の通り「学習された無力感」のことです。

無力感というのは「何をしたってどうせダメなんだ」という感覚。

  • ストレスフルな環境に置かれて、そこから脱出しようとしても何度も失敗したり
  • 同じような失敗を繰り返すと

「何度やってもダメなんだ」と無力感を感じてしまい、次からチャレンジすることさえしなくなる、という現象のこと。

英語では、”Learned Helplessness”。

学習性無力感が一般的な訳語ですが、「学習性絶望感」「獲得された無力感」「学習性無気力」と訳されることもあります。

心理学者セリグマンの「無力感」実験

この学習性無力感の概念を提唱したのは、アメリカの心理学者マーティン・セリグマンです。

セリグマンが行ったのは、以下のような実験。

予告音が鳴ったあとに犬に電気ショックを与える、という装置を用意します。

電気ショックが来るのは床から。

なので、予告の電子音が鳴ったあとに犬がジャンプすれば電気ショックを回避することができるようになっています。

次に、実験に参加する犬に、いくつかのグループを作りました。

一つめは、事前に別の装置で「何をやっても電気ショックを回避することができない」という経験をした犬のグループ。

二つめは、事前に別の装置で「パネルを押すことで電気ショックを回避できる」という経験をした犬のグループ。

三つめは、事前に何の経験もしていないグループです。

この3つのグループで実験を行うと、一つめの「何をやっても回避することができない」という経験を持っていたグループは、他のグループの犬がジャンプして電気ショックを回避するのに比べて、回避行動をとる率が低いという結果に。

この結果をセリグマンはこう解釈します。

事前に「何をしても回避できない」経験をしてしまったために、「何をしてもムダだ」と無力感を学習してしまった。環境が変わっても、「何をしてもダメだ」という無力感だけが残ってしまい、行動を起こさなくなるのだ、と。

その後、別の心理学者が、大学生を対象にした実験を行い、そこでもやはり「無気力を学習する」現象が確認されます。

 

学習性無力感の実例

もしあなたが、「どうせ何をしてもダメだし…」と現に無力感を感じているとしたら、しかも、過去の経験でそう感じて、その時から環境が変わっているのに、無力感だけが引き続き残っているとしたら、それが学習性無力感。

実例1

初めはやる気満々で、上司に「こうしましょう!」と何度も提案していた部下。

却下され続け、「何を言ってもダメなんだ」と思ってしまった。

上司が変わっても「結局言ってもムダだし…」と無力感だけが変わらずに残っている。

実例2

何度か恋人に振られて、「どうせ自分なんて魅力ないし」と感じてしまった。

その無力感が残り続け、次の恋愛に踏み出していけない。

克服のヒント

学習性無力感というのは、「どうせ何をやってもムダだし…」と無力感を学んでしまうことです。

これを克服するためには、「自分の努力に意味がある」という正反対を実体験すればいい、ということになります。

では、自分の行動に意味があると思えるためには、どうしたらいいでしょうか。

小さな成功体験を重ねる

まずは、小さな成功体験を重ねるというのが効きます。

例えば、ちょっとした目標をつくってそれを実行する、実行できたら「できた」というのを記録に残しておく、といったようなことです。

そうすれば、「何をしても結局ムダなんじゃないか?」とささやきが聞こえてきても、記録を見返せばいいんです。

「今までの努力がムダじゃなかった」という証拠を残しておくと、無力感にさいなまれることは大きく減ります。

「変わっていること」を考える

また、環境が変わっても、無力感だけが学習されたまま残っているのが問題なので、環境が変わっているのを自問自答しながら確認する、という方法もあります。

  • 自分が無力感を感じた状況と、今とは同じでしょうか?
  • 相手は同じですか?
  • 環境は同じですか?
  • 自分もその時と同じでしょうか?

違うのなら、また同じ失敗をするとは限りません。昔、無力感を感じた状況と、今は違う、ということを一つひとつ確認していきましょう。

まとめ

学習性無力感にどう対処していくかは、とても大事なテーマ。

誰しも「何をやっても効果がない」を感じる体験はあるでしょう。

そんなとき、「学習性無力感というものがある」ということを知っているだけでも、予防する力になりますから。

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